ニュースの概要
TAC株式会社は、サイバーセキュリティ分野の国家資格である「情報処理安全確保支援士」の取得を目指す人向けに、2026年後期試験の合格を目標とするオンラインライブ通信講座を新たに開講した。自宅などから受講できる通信講座の柔軟さと、講師や他の受講生とやり取りできる教室講座の臨場感を組み合わせた双方向型の授業を特徴としており、10月10日には無料の体験入学も実施する予定だ。資格予備校各社がオンライン講座の拡充を進める中、学習の継続率や理解度をいかに教室型に近づけるかが各社の差別化ポイントになりつつある。
引用元: TACが「情報処理安全確保支援士」向けオンラインライブ通信講座を開講(PR TIMES)
分析・見解
なぜ今「双方向型」が資格スクールのキーワードになったのか
動画を見るだけの一方向型オンライン講座は、通学よりも続けにくいという弱点が長年指摘されてきた。情報処理安全確保支援士のような長丁場の学習が必要な資格ほど、離脱(=途中で学習をやめてしまうこと)が起きやすい。TACが今回、ライブ配信型にこだわったのは、質問をその場で講師に投げられる環境と、同じ目標を持つ受講生の存在を感じられる環境を作ることで、継続率を上げる狙いがあると考えられる。通信講座の欠点として長年挙げられてきた「孤独感」への対策として双方向性を前面に出したのは理にかなっており、他の難関資格の講座設計にも波及しそうな発想だ。
情報処理安全確保支援士市場が注目される理由
この資格は単なる技術資格ではなく、登録者には2年ごとの講習受講義務があり、独占的な名称使用が認められる「士業」に近い位置づけを持つ。経済産業省がサイバーセキュリティ人材不足を継続的に指摘していることもあり、企業側が資格手当や昇進要件に組み込む動きが広がっている。資格スクール各社にとっては、受講者数の母集団が大きく、かつ教育訓練給付金(=一定条件を満たす講座の受講料の一部が国から支給される制度)の対象講座も多いため、収益性の高い分野として競争が激しくなっている。
無料体験入学という入口設計の意味
10月10日に設定された無料体験入学は、受講検討者が「双方向型」の実際の臨場感を無料で確認できる機会になる。資格講座は申込後のミスマッチ(=思っていた内容と違うという不満)が解約や低評価につながりやすいため、体験の場を設けることは受講者側にもメリットが大きい。他の資格スクールでも無料体験を実施する例は増えているが、ライブ配信の双方向性まで体験できる設計は多くはなく、意思決定の材料として価値がある。
オンライン講座の均質化と今後の差別化軸
オンライン講座自体はどのスクールも提供するようになり、「オンラインがあるかどうか」はもはや差別化要因にならない。今後の競争軸は、双方向性の質、質問対応の速さ、学習継続のための仕組み(リマインドや学習進捗の可視化など)に移っていくと見られる。情報処理安全確保支援士に限らず、長期学習が必要な資格ほどこの傾向が強まるため、受講者は「講座の形式」だけでなく「挫折させない仕組みがあるか」を比較基準に加える必要があるだろう。
ビジネスへの影響
企業の人材育成担当者が検討すべきこと
社内でサイバーセキュリティ人材を育成する企業にとって、双方向型講座は研修効果を高める選択肢になり得る。一方向型の動画学習では理解度にばらつきが出やすく、受講後のフォローアップ研修が別途必要になるケースが多い。双方向型講座を研修メニューに組み込む際は、ライブ受講できる時間帯を業務時間内に確保できるかを事前に確認したい。受講者が質問しやすい雰囲気かどうかも、集合研修と異なりオンラインでは見えにくいため、体験入学の段階で社員に試させてから正式導入を決める進め方が無難だ。
講座選定時に確認すべき比較ポイント
情報処理安全確保支援士の講座を比較する際は、料金だけでなく、ライブ配信の頻度、質問対応の方法(チャットか音声か)、見逃し視聴の可否、教育訓練給付金の対象可否を確認するとよい。本サイトの比較ページでも各社の通信講座の特徴やIT資格対応講座を整理しているので、申込前の比較材料として活用できる。特に見逃し視聴の有無は、繁忙期に業務とライブ受講が重なりやすい社会人受講者にとって継続率を左右する重要な条件になる。
中小企業にとっての投資対効果
大手企業と違い研修予算が限られる中小企業では、1人あたりの受講料だけでなく、合格率や挫折率(=受講を継続できず途中でやめてしまう割合)まで含めた投資対効果の検証が重要になる。給付金の対象講座を選べば実質負担を抑えられるため、人事・教育担当者は申込前に対象可否を必ず確認すべきだ。また、合格後は2年ごとの講習受講義務が続くため、初期費用だけでなく資格維持にかかる継続コストまで見積もったうえで導入を判断する必要がある。
